◆糖尿病


糖尿病は、糖質の代謝が悪くなり血糖値が高い状態が続いています。そこで血糖値を上げないためには、糖質を減らす食事指導と、血糖値を下げる薬、血糖値を下げるホルモン(インスリンなど)注射が一般的治療です。

 

ところで、糖質(米飯)が糖尿病の原因でしょうか?たしかに糖質を食べると血糖値は上がります。でも、ずっと日本人は穀物主体の食事をしてきました。昭和の初期まで糖尿病は珍しい病気です。穀物ばかり食べていたのに。

戦後、生活習慣病が増えました。同じように増えたものは、油脂です。米の消費量は戦前の半分以下です。

 

アメリカ・ヴァージニア工科大学の研究があります。

(たった)5日間の高脂肪食(脂肪比率 約55%)でインスリンの働きが悪くなるというものです。

メニューの一例:ソーセージパン、チーズとバターがたっぷりのマカロニ

 

低脂肪食はインスリンの効きがよいことが、わかっています。低脂肪食とは、つまり高炭水化物食ということです。

 

日本人(アジア人)は農耕民族で低脂肪食だったので、インスリンは少量ですんでいました。そのため欧米人(高脂肪食)に比べてインスリンを出す能力が低いのに、洋食中心の高脂肪食をするようになり、糖尿病が増えていると思われます。

 

そこで、「おむすび」(の割合)を食事の中心にしてもらう食事指導をしてきました。面白いほど血糖値が落ち着いていきます。

なにより、空腹感に困ることがありません。従来の、少量の米飯で、小腹が減ってお菓子を食べてしまうという悪循環がなくなります。

 

 米飯をきちんと食べて、油脂をほとんど摂らない食事。野菜、きのこ、海藻類はたくさん、でも調理に油は極力使いません。肉も魚も卵も大豆も乳製品も、その中に油脂が含まれていますから、それだけで十分です。肉も魚も乳製品も、たくさん食べるとアブラがたくさん入ってきますから、ほどほどに。健康にいいと言われている油も、アブラです。飲まないで。

 

 おむすび生活を、いつまで続けるのか?と聞かれることがあります。

週に1食くらいは、ご馳走をどうぞ。

 


こんな感じです。年齢は初診時。


●Kさん 72歳 女性

・2022年12月 

 膀胱炎で来院。尿検査をしたところ、尿糖(4+)。本人は糖尿病の自覚なし

 HbA1c;11,0。息子家族と同居していて揚げ物が多い。息子夫婦は糖尿病。

→ まず揚げ物禁止。米飯はきちんと食べる。

 

・2023年1月(メトホルミン250mg2錠)

 HbA1c;8,6。揚げ物は食べていない。米飯はきちんと食べている。

 

・2023年2月(メトホルミン250mg1錠)

 HbA1c;7,6。肩こりがひどい、桂枝加朮附湯服用開始。坐骨神経痛も。

 体重が2kg減。

 

・2023年3月(メトホルミン250mg 1錠を1日おきに)

 HbA1c;6,6。肩こり。食事は、ご飯と野菜、少量の刺身など。

 

・2023年4月(メトホルミン250mg 1錠を1日おきに)

 HbA1c;5,9。口角炎。メトホルミンの副作用の可能性。メトホルミン中止。

 

・2023年5月(服薬なし)

 HbA1c;6,2。肩こり、坐骨神経痛。

 

・2023年7月(服薬なし)

 HbA1c;6,3。

 めまい発作があり、五苓散を服用。天気の悪くなる時に飲んでもらう。

 

・2023年9月(服薬なし)

 HbA1c;6,2。肩こりはある。坐骨神経痛は気にならない。食事は米飯中心。

 揚げ物は食べていない。もともと間食はほとんどしない。

 糖尿病薬を中止して3ヶ月経つが、食事でコントロール良好。

 

・2023年12月(服薬なし)

 HbA1c;5,9。肩こりがなくなった。

 

・2024年1月(服薬なし)

 調子がいい。肩こりはない。薬は痛くなったら飲むことにしているが飲んでいない。

 めまいも起こっていない。HbA1c;5,6。

 

・2024年7月(服薬なし)

 HbA1c;6,1。肩、首がときに痛む。とくに困っていない。

 

・2024年9月(服薬なし)

 HbA1c;5,9。ごちそうは、ほとんど食べていない。苦にはならない。病気になる方が  

 嫌。めまいは、きざしがあったら五苓散を飲んでいる。それで治まっている。

 調子はいい。


●Nさん 68歳 男性

・2022年1月

 手足の冷え、肩の痛み、腰痛、便秘などの治療を漢方薬でということで来院。長年患っていた糖尿病も、と。4種類の糖尿病薬を服用中、HbA1c;7,3前後。

 →糖尿病薬を3種類(メトホルミン、アナグリプチン、エンパグリフロジン)に。アブラ制限、おむすびの話をするが、「ご飯はたくさん食べてはいけないと教わっている。スーパーの惣菜を値下がりしてから買っているから、揚げ物しか残っていない。」と抵抗。

 

・2022年10月

 漢方薬を飲むようになり、からだの痛みはなくなった。しびれは残っている。

便秘は調整できている。要介護3だったが、2になった。薬はそのまま。

 HbA1c;7,7。

 

・2022年12月

 体調はとても良い。とのことだが、HbA1c;8,5。薬はそのまま。

 

・2023年6月

 HbA1c;9,0。薬を飲んでいて食事もきちんとしているのなら、このままでは注射です、と説明。「ちゃんとやるから、ちょっと待って」と。

 

・2023年7月

 HbA1c;7,4。体重が4kg減。

 「おむすびと味噌汁と卵と野菜ばっかり。揚げ物は食べてない」と。本当にそうだったと思います。薬は変えていませんから。スゴイです!

 

・2023年9月 

 HbA1c;6,8。またまた、スゴイです。週に1回くらいは、ご馳走を。

 糖尿病薬を減量(エンパグリフロジンを半量に)。

 

・2023年11月

 HbA1c;7,4。薬が減ったので、こんな感じでしょう。少しおかずを増やしたとのこと。

 

・2024年1月

 HbA1c;10.2。驚きの高値!どうしたの?油断大敵です。言葉少なに語るには、アイスを毎日食べた。おかずも、いろいろ。そして寒いからじっとしていたそうです。動きましょう。スクワットを説明。もう一度、ふりだしに戻る。今度は、何を食べたらいいのか、よくわかっていますから大丈夫でしょう。

 

・2024年5月

 HbA1c;9,1。がんばったつもりだけど、あまり下がっていなかったので本人は少しショック。エンパグリフロジンを倍量に。

 

・2024年7月

 HbA1c;7,9。右半身は不自由だが、なんとか草刈り機を使って毎日草刈りしている。

 

・2024年9月

 HbA1c;8,0。草刈りをする時間が延びた、と嬉しそう。でも頑張りすぎて、肘が痛いと。

 

・2024年10月

 HbA1c;7,0。揚げ物は食べていない。草刈りをがんばっている。麻痺があるので、やりにくいが時間をかけてやっている。夏の間、汗を大量にかいているのに厳しい減塩食をしていたために血中の塩分が不足していました。梅干しを食べるようになって、ようやく正常値に。

 


●Mさん 65歳 男性

・10年前から糖尿病予備軍と言われていた。HbA1c;6,2~6,5。

 

・2023年4月 HbA1c;6,7。

 

・2023年9月 とても疲れやすく8kg痩せた。汗が異常に出る。毎日アイスクリームを3,4個、清涼飲料をがぶ飲みしていると来院。HbA1c;13,8。

 6月に転職して炎天下の作業。休憩室で食べ放題のアイスクリームと清涼飲料水を大量に飲食していた、とのこと。アイスクリームと清涼飲料水の禁止、お茶か水のみ。揚げ物禁止。ご飯はきちんと食べる。メトホルミン、アナグリプチンの服用。

 

・2023年10月 HbA1c;11,9。

 糖尿の薬を飲みだして口渇、立ちくらみ、夜間頻尿がなくなり元気になってきたと。米飯、高野豆腐、卵、きんぴら、みそ汁など。揚げ物は食べていない。

 

・2023年11月 HbA1c;8,4。メトホルミンは半量に。調子がいい。食事は気を付けている。アイスクリームはもう食べない、と。

 

・2023年12月 HbA1c;6,6。メトホルミン減量。

 

・2024年1月 HbA1c;5,8。もともと食事のみでコントロール良好だったので、いったん薬は中止することに。

 

・2024年5月 母親の看病でストレスが多い。仕事をやめて、付き添っている。運動不足。HbA1c;7,6。メトホルミン500mg。

 

・2024年7月 仕事を再開。HbA1c;6,6。メトホルミン500mg。

 

・2024年8月 HbA1c;6,0。次回の結果で、メトホルミン減量予定。

 

2024年10月 HbA1c;6,6。メトホルミンは500mgのままで。

 

・アイスクリームは、乳脂肪と砂糖でできています。食べ過ぎると、ヒサンなことに。


●Kさん 60歳 男性

 前医からの継続。もともとインスリン自己注射をされていました。いまは服薬のみです。

・2021年3月 初診。インスリン自己注射、メトホルミン服用。HbA1c;9,8

 

・2021年10月、インスリン量を増やした。HbA1c;7,2。

 

・2022年3月、食事(ごはんたくさん、油脂制限)に気を使ってもらい、インスリンは減量。HbA1c;7,4。

 

・2023年2月、インスリン自己注射中止。服薬のみに変更、メトホルミン、アナグリプチン、エンパグリフロジン、降圧剤など。HbA1c;7,7。

 

・2023年4月、HbA1c;7,3。農作業が忙しい。服薬のみ。

 

・2023年10月、HbA1c;7,1。1日にごはんを2合。ゴルフの飛距離が伸びた。調子がいい。服薬のみ。

 

・2023年12月、HbA1c;7,8。とくに変わりないが、血圧が高めなので降圧剤追加。

 

・2024年10月 HbA1c;8,1。農作業が忙しい。調子がいい。夏にコロナ感染症になり、少し体力が落ちていたが回復した。


●Kさん 63歳 女性

 ほぼパン食。サンドイッチ、菓子パン、コロッケとビールという食生活。

HbA1c;10,3だったが、放置していた。これまで数回食事指導を受けていたが、挫折。

2021年4月 HbA1c;11,2。治療をがんばるとのこと。メトホルミン500mg、アナグリプチン200mg。ご飯に切り替え、揚げ物禁止。

 

2021年7月 HbA1c;6,6。アンパンくらいにしている。ビールも減った。ご飯を食べるようにしている。メトホルミン500mg、アナグリプチン100mgに。

 

2021年9月 HbA1c;6,2。メトホルミン250mg、アナグリプチン100mgに。

 

2022年1月 HbA1c;7,5。メトホルミン500mg、アナグリプチン200mgに。

 

この間、HbA1c;6,5~7,4。

 

2023年5月 HbA1c;6,9。薬は同じ。

 

2023年9月 HbA1c;7,4。自己判断で薬を飲んでいなかったとのこと。それでもあまり高くないと、喜んでいた。

 

2023年12月 HbA1c;10,5! 久しぶりの来院。以前と同じものを食べているというものの、朝食の米飯をやめてパンにしたとのこと。よくよく聞いてみると、毎朝ピーナツバターをたっぷり塗っていた。「ピーナツは身体に良いとテレビで聞いた」と。糖尿病薬再開、食事を元通りに。

 

ところが!

この間、何となく来院しなかった。とのことで、10カ月ぶりに来院。会社の健診で血糖値が高すぎて医者に行くように言われた、と。

 2024年10月 またまたHbA1c;10,0。最近だるい、調子悪い、喉が渇く、と。

とりあえず、メトホルミン+アナグリプチンで。

 

2024年11月 HbA1c;8,1。血圧も高くなっていたので、降圧剤も。調子は悪くないとのこと。落ち着いてきたら、糖尿病薬は減らしていく予定です。

 

それにしても、悪化の原因はアブラです。植物性でも油はアブラです。


●Tさん 65歳 男性

もともと糖尿病。脳梗塞の後、糖尿病の治療を受けHbA1c;6,2~6,5。他院より転院のかたです。2024年6月初診。

 「一日中アメを食べている。」と家族。「1日に5袋。毎日。寝ている時も。」と。中性脂肪が500近くになっていて、アメの多食のためと思われます。聞いてみると、食事の量はむしろ少なすぎるくらいです。「あまり食べられない」と。それだけアメを食べれば入らないでしょう。

 でも、異常な食べ方なので、もしかしたら糖病病薬が効きすぎて低血糖になっていて、それを補うためにアメを食べ続けているのでは?とヒラメキが。いったん糖尿病薬を中止してもらうことにしました。するとすぐにアメの多食はなくなり、食事が食べられるように。経過観察中です。

 一見、糖尿病薬でコントロール良好と思われるのですが、そうではないことも。

2024年7月 糖尿病薬中止したがHbA1c5.6。

 2024年8月 HbA1c;6,4。

2024年10月 HbA1c;7,7。さすがに上がってきているので、食事指導。

 


● Hさん 82歳女性

2023年3月転院。

糖尿病の治療中。α‐グルコシダーゼ阻害剤、DDP-4阻害剤、メトホルミンを服用中。HbA1c;5,5。数値が低いのでα-グルコシダーゼ阻害剤を中止。

 

2023年4月 HbA1c;5,5。他の糖尿病薬を半量に。

 

2023年5月 HbA1c;5,7。以前より食事量も間食も減っているとのこと。いったん糖尿病薬中止。経過観察。

 

2024年2月 HbA1c;6,3。このまま糖尿病薬は中止、経過観察。

2024年7月 HbA1c;6,2。糖尿病薬なし。経過観察中。

2024年11月 HbA1c;6,4。この間糖尿病薬なし。好きなものを食べている。

 

たくさん糖尿病薬を飲んでいたかたです。食生活が変わったためか服薬なくても維持できています。